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活動レポート

サステナブルな環境保全をバリ島で考える「マングローブ・棚田をプラごみから守れ」

サステナブルな環境保全をバリ島で考える「マングローブ・棚田をプラごみから守れ」
「環境」をテーマにして9月にインドネシア・バリ島を訪れたスタディ・ツアー『バリ島のマングローブと棚田とごみからサステナブルを考えるエコツアーの報告を、会報誌アジアネット156号のトップ記事から抜粋してお伝えします。

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2023年9月13日から4日間、参加者10人が海岸のマングローブ林や山村の棚田で植林してプラスチックごみを拾い、豊かな自然とともに生きる人々の営みを見て、地球規模で進む環境破壊の状況とサステナブル(持続的)な環境保全活動について学んで考えました。
傷ついたカメ、侵食された浜(9月13日)
有名なリゾート地・サヌール近くの海ガメ保護センターに、漁網に絡まったり船のスクリューに巻き込まれたりして手足を切断されたカメが保護されていました。お腹にプラスチックごみがたまって苦しむカメが救助されることもあります。甲羅に覆われているので開腹手術ができず、内科的に排出を促すしかないとのこと。砂浜に産んだ卵も人に踏まれたり野良犬に食べられたりするので、保護してセンターで孵化して海に帰します。私たちも赤ちゃん海ガメを放流しました。かつてこの周辺では海ガメが食用に乱獲されて激減し、政府が保護を始めたそうです。

 周辺のサンゴ礁にも破壊が及んでいます。海が埋め立てられ、サンゴが建材や装飾品用に採取されました。今は禁止され保全されているようです。

 観光客によく知られるクタビーチやテガルベサルビーチで、波によって浸食された砂浜を見ました。ホテルが海に浸かって廃業していました。私たちを案内してくれた現地提携団体AFSのシディ・ターカーさん(ディアナプラ大学教授)は、地球温暖化による海面上昇の影響と言っていました。過去100年間に世界の海面は平均20㎝程度上昇したとの推計があるので、影響が表れやすい場所から浸食が始まっているのかもしれません。

 ガムラン音楽の村・ウブド近くの5つ星ホテルは環境に配慮し、客室で使う飲み水の容器は再利用できるガラス、ストローは生分解性のものにし、バリ州政府から表彰されたそうです。
傷ついたカメ、侵食された浜(9月13日)
政府の新方針で分別処理へ(9月14日)
デンパサール空港に近いベノア湾の海岸で、地元の大学生や漁業者とマングローブを植樹。根に絡んだプラごみをカヌーに乗って回収しました。ここは元々の天然マングローブ林を伐採して造ったエビの養殖池が放棄され、その跡が90年代にJICAの支援で植林されました。現在はバリ州政府が管理する大規模森林公園になっています。

 2つの大きな河口に、上流からごみが流れ着きます。一方の河口には流量を調整する堰があり、ごみを止める役割もしています。根にごみが絡むと、樹木にも水中の生態系にも悪影響を与えます。それを人の手で回収できるのは、まだ幸運だとも思いました。

 回収したプラごみで一番多かったのは、買い物バッグのような袋状シートでした。ただし、バリ州では19年から、店でのプラ袋提供が禁じられています。実際に私がツアー中に買い物をしたスーパーでも、各自持参のバッグに入れて持ち帰るのが当然のようになっていました。マングローブ林のプラごみは、2年前のブルーオーシャン作戦のときに写真で見たより少なく感じました。クリーン活動と共にプラ袋の提供が減った効果かもしれません。

 シディさんの大学と同系列の教会が運営するごみ処理施設を訪問しました。以前はマングローブ林の東にスウン埋立地という一大ごみ埋立地がありましたが、ごみ山を土で覆って22年に閉鎖されたとのこと。埋立て廃棄していたごみは今後は村単位でできるだけ循環利用するように、と政府の方針が変わったのです。その方針に沿ってごみを処理するモデル施設です。次のような循環利用が実施されていました。
・野菜くずや草刈りした草→豚の餌に
・野菜や草を乳酸発酵→母豚の餌に
・豚を繁殖→子豚を売って収益に
・稲わら→畑に敷き雑草防止や肥料に
・稲わら・落葉や雑草・ヤギの糞→堆肥化して畑で利用、販売し収益に
・ヤギの糞→バイオガス化して利用
・プラごみ→近隣7カ村で分別収集・回収、ジャワ島の施設でリサイクル

 これらを各村が運営するよう求められています。この施設モデルを近隣の村に普及させることが必要です。循環利用が根付くかどうかは、住民の力に委ねられているのです。

 ごみ回収費は、政府補助金に頼るだけでなく、各家庭が支払っているようです。課題も出てくると思います。循環利用しきれず最終的に廃棄せざるを得ないごみの行方、ポイ捨てが増える懸念などです。方向を見失わずに乗り越えるよう、応援したい気持ちです。

 スウン埋立地を沿道から垣間見ました。まだ土で覆われていない箇所は雑多なごみが積み上がり、周りの道路や水路に、風で飛んだと思われるごみが散乱していました。新方針に沿って状況は改善されるでしょうが、私は、ここで有価物を拾って売って生活していた人たちはどうなったのかと、気になりました。

 ディアナプラ大学で教員と意見交換。日本の参加者から、ごみ問題に質問が集中しました。
 最初に見せられたスライド写真が印象的でした。「ごみ災害」というタイトル。日本でも報道された、大量のプラごみが流れ着いたクタビーチです。12~2月頃にジャワ島から季節風に乗って流れ着いたごみで、バリが原因ではないのに悪いイメージが付いて、とんだ「災害だ」というわけです。

 参加者から「バリ島内から海に流出して漂着する分もあるだろう」との意見。バリからの返答は「圧倒的にジャワ島由来が多い。それでもバリは観光地だから、イメージが大切。ごみ問題へ取り組もうとしている」。

 別の参加者からは、家庭が支払うごみ回収費が所得と比べて高いのではないか、と心配する声がありました。大卒初任給300万ルピア(約3万円)/月、貧困層の収入120万ルピア/月に対し、回収費は4万ルピア/月。日本の約2600円に相当します。

 最後にシディさんが「次第にあなたたちが、私の妻に見えてきた」と言いました。家でごみの扱いは奥さんの方が厳しく、よく捨て方を注意されるとのことでした。ところ変われど、日本も同じ。おかしく思えました。
政府の新方針で分別処理へ(9月14日)
子どもたちとクリーン活動(9月15日)
宿泊したホテルに近いクタビーチを早朝に歩きました。朝にごみ清掃が行われると聞いたので、その前の状況を見ようと思ったのです。季節風の時期ではないので、想像したよりきれいでした。歩道や店の前を掃除している人々に、プラごみを集めたらどうするのか尋ねたら、詰所のようなところに持って行くとの答。観光地としてきれいに保っているのだと思いました。

 ただ、陸側に上がった店や歩道の裏には、ごみが散乱していました。掃除をしなければこういう状態なのでしょう。観光客によるポイ捨ても疑われます。ビーチにいくつかごみ箱が置かれていましたが、その周りにもごみが散乱していました。あと2歩進んでごみ箱に入れたらいいのに。

 ツアー後半は山へ移動しました。シディさんが、お母さんの故郷タバナン県の山村で、小学生たちが放課後や週末に勉強したり遊んだり、昼ご飯を食べたりする子どもセンターを運営しているのです。私たちが着くと、子どもたちが「もしもし、こんにちは~」と声をそろえて出迎えてくれました。

 小学校低学年には国語を、高学年には英語を教え、これからはコンピュータ教育も始めるそうです。シディさんの奥さんと子どもたちのお母さんが作ってくれた昼食をいただき、子どもたちの合唱「コチコチカッチンお時計さん~♪」を聞いた後、敷地内にココナツや果物の苗を植樹。子どもたちと一緒に、村に広がる棚田の周りの小道を歩いてクリーン活動をしました。

 実はこの直前、日本から土産に持参した菓子を子どもたちに渡しました。プラスチック個包装なので、少し罪悪感を抱きながら、「ポイ捨てしないでね」と言ったのですが、食べた端から見事にポイ捨てされ、プラごみが敷地内に落ちていました。センターで私たちに出されたお菓子は、笹のような葉で包まれていました。プラを使わない暮らしにプラを持ち込んでしまった身ですが、子どもたちにポイ捨てしてはいけないことを心底分かってもらいたいと願い、一緒にごみを拾いました。

 道端にたくさんのごみが落ちています。たばこの箱があるので、大人も捨てていると分かります。子どもたちがポイ捨てしないことの大切さを実感してくれ、日本人と一緒にごみ拾いした記憶とともに心に残してくれたら良いなと思いました。

 最後にシディさんが子どもたちに「みんながお菓子の袋をポイ捨てしたので、日本のゲストが嘆いていたよ。もうしないように」と伝えてくれました。センターを運営するシディさんの妹サリ・ターカーさんからは「子どもたちにとってごみを拾うことは環境を守る体験となります。それが他の友だちの手本になれば、きれいな自然が保たれ、健康も守られます」とコメントをいただきました。

 一軒の農家を訪ね、台所などを見せてもらいながら暮らし方を教わりました。湧水を引き、煮沸して飲み水にしていること、調理はかまどで薪を燃やしていたが、若夫婦はプロパンガスのコンロを好むこと、政府の新方針に沿ってプラごみを分別し、回収してもらっていることなどです。新方針がここでも機能し始めているようです。

 帰りの道沿いにさまざまな果物の木がありました。一緒に歩いた子どもが、食べ頃のマンゴスチンの実を一つ見つけて手渡してくれ、皆で食べました。今までで一番のおいしさでした。豊かな自然です。

 実はこの朝、村に行く道すがら、シディさんが、ぜひ見てもらいたい、と小さなヒンドゥ寺院に案内してくれました。神に守られている湧水を村人が大切に使い、薬効がある木や草花がたくさん植えられていました。「バリでは、花や水や環境すべてが暮らしの中に織り込まれている」。それをシディさんが伝えたかったのです。自然環境と一体となったバリヒンドゥが人々の暮らしに溶け込んでいると、私も確かに感じていました。その湧水の傍にもごみは散らかっていましたが。
子どもたちとクリーン活動(9月15日)
生きる宗教伝統と有機農業(9月16日)
最終日。世界遺産のジャティルウィ棚田を訪れました。島では農地転用が進み、水田が減り続けているそうですが、元々稲作が盛んで、伝統的な水利組合スバックが水を管理し、農業関連のヒンドゥ儀礼を共同でしています。

 ちょうどその儀式が行われていた地域で農家から説明を聞き、地元の伝統食をいただきました。米を収穫するまでに15段階の儀式があり、化学肥料や農薬を使わないと誓う儀式もあるそうです。使うのは、生ごみなどを堆肥化した有機肥料。政府の新方針に沿ってプラごみも分別して回収してもらい始めたそうです。

 バリのごみ管理に関する社会システムが改善され始めたことをうれしく思いながら、ポイ捨ての習慣などが変わっていないことも認識したツアーでした。バリの人々の意識や行動が、システム改善に追い付いて変わることが必要です。今回のツアーがわずかな一助とでもな-ればと願っています。
生きる宗教伝統と有機農業(9月16日)
〇ツアー参加者のひとことコメント〇
『ごみ問題の根深さ実感』 西岡 伸康
マングローブの根に引っかかった大量のごみや濁った海水に少しショックを受けました。クリーン活動の大変さと、ごみ問題の根深さを実感。フリースクールで生徒たちと一緒にクリーン活動ができたのは貴重な時間でした。充実した教育が必要なのだと感じました。環境問題や国際協力で自分に何ができるか考えたい。

『多く学べた有意義な旅』 辻本 選子
バリ島は4回目。今までと全く違う有意義な旅でした。肉体労働的なボランティアを覚悟していたのですが、年齢を考慮していただいたのか、現地の方々の役には立てなかったなあ、という実感です。ただただ楽しい旅でした。参加者のレベルの高さに圧倒されましたが、皆様いい方ばかりで、学ぶことが多かったです。

『植林・ごみ拾いに時間を』 佐藤 孝敏
第一の目的は、マングローブ林のごみ状況を再確認することでした。20年前に同じ場所を訪れ、ハマザクロのおしべの花筏に見とれた一方、ごみで埋め尽くされた水面を見て幻滅していました。今回は、ごみが大変少なかったことが印象的でした。植林や、ごみ拾いにもう少し時間をかけても良かったのではと感じました。

『40年の交流の証に感慨』 法花 敏郎
シディ先生の勤める大学に記念の木を植えたら、そばに大きな木がそびえ立っていた。JAFSの村上公彦専務理事らが植えたという。JAFSがアジア各地の海岸などに植えた木は259万本。大きく育ち、緑化と津波被害防止に役立っているに違いない。40年に及ぶ交流の証でもある。
  
『多くの現場見て聞けた』 大本 和子
多くの現場を訪れ、この目で見、説明を聞き、実にぜいたくな実り多いツアーでした。思いもよらず多方面の専門家が参加されていて、場面場面で適切な説明を受けることができたのが一番良かった点です。

『環境NGOの生の声を』 栗岡 理子
かけがえのない体験ができました。一つ欲をいえば、現地の環境NGOから生の声を聞きたかった。例えば、先進国はインドネシアがプラスチックをまともに処理できず、住民もその特性をよく理解していないと知りながら、プラ包装の食品や、すぐにごみになるプラ製品を売りつけていることをどう思うか、などです。
〇ツアー参加者のひとことコメント〇
他にもたくさんの活動レポートがあります
会報誌アジアネット156号には、他にもアジアや国内の活動情報が満載。以下のURLからご覧ください。
https://jafs.or.jp/user/media/jafs/page/about/summary/156.pdf

アジアネットのバックナンバーは下記ページにあります。
https://jafs.or.jp/about/summary/asianet.html
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